アスペルガー症候群

  @アスペルガー症候群とは

 言語発達に大きな遅れがないということ、知能水準が正常範囲内(少なくともIQ70以上)あるいはそれ以上である。
 学校生活で引き起こされるトラブル一つ一つを何とかクリアしていけるように必要な治療教育的介入をしていけば、小学校高学年には何とか学校生活でいかに過ごすかがわかってきて、適応的に過ごせるようになってくる場合が多い。
 アスペルガー症候群は自閉症スペクトラムのうちで能力の高い方の端に位置する障害と考えられている。自分が興味をもつことにはのめり込むので、その分野で後々大きな業績をあげることもある。

  A治療と対応

○医学的処置(心理発達検査・投薬治療)と教育的な措置を並行して行う。

○早期に発見して適切な治療をすれば、経過が良好となる。

○周囲の人たちや社会にも理解を呼びかける必要がある。

  Bアスペルガー症候群の7つの特徴と、教師のための指針

   1)変化を嫌う

 アスペルガー症候群の子供はわずかの変化に圧倒されやすく、周囲のストレス要因にきわめて敏感です。何を期待されているのかがわからないと不安になり、とても心配するようになります。そして、ストレスや疲労がたまり、感覚に負荷がかかりすぎて容易にバランスを失います。

○提案

・予測可能で安全な環境にする。

・変更を最小限にする。

・日課を恒常的なものにする。

・びっくりさせるようなことは避ける。

・未知の物事に対する恐怖心を前もって和らげておく。

   2)対人相互交流の障害

 アスペルガー症候群の子供は,人付き合いの複雑なルールが理解できない。ナイーブで、極端に自己中心的である。体が触れることを嫌うことがある。人に当てつけるような話し方をする。冗談や皮肉やたとえが通じない。単調な話し方や、大げさな話し方、あるいは不自然な声の調子で話す。不適当な視線や身ぶりの使い方をする。気配りができず機転がきかない。人と付き合う時の手がかりを誤解する。相手との距離が判断できない。会話を始めたり続けたりすることが下手である。話し言葉の点ではよく発達しているが、コミュニケーションの点ではよくはない。人にだまされやすい。

○提案

・子供をいじめから守る。

・対人関係がひどく下手なら、障害ということを話し、他の子供を教育する。

・いろんな対人場面での行動の仕方を教える。何をどう言うべきかを教える。

・なぜよくないのか、どうならばよかったのかを説明することで、正しい対応の仕方を習得することはできる。

・気の利く子供を選んで、席を隣同士にすると役に立つことがある。

・孤独になりがちなので、まわりの子供とかかわるよう教師は促すべきである。

   3)狭く限られた興味

 風変わりなものに夢中になったり、普通では考えられないくらいの強いこだわりをもったりする。興味のあることについて、一方的に講義しまくったり、何度も繰り返し質問したり、ある観念から離れるのが困難であったり、まわりのことにはおかまいなしに自分のしたいようにしたり、時には特定の関心事以外のことは学ぼうとしないという傾向がある。

○提案

・その場に関係のない関心事についてしつこく話したり質問したりすることを許さない。そういうことのできる時間を別に設けること。

・望ましい行動を形成するため、選択的に正の強化(ほめる)をすること。

・自由にできることと、特定のルールに従わねばならないこととが、はっきりとわかるようにする。しかし、子供自身の興味を追求する機会を与えることで、子供に歩み寄ることも必要である。

・特に扱いにくい子供には、最初すべての課題を子供の興味に応じたものにする必要があると思う。そして徐々に他のテーマを課題に取り入れていく。

・子供の興味を学習テーマに結びつけて、課題を与えてもよい。

・子供の興味の範囲を広げるために、子供のこだわっているものを用いる。

   4)集中力の不足

 アスペルガー症候群の生徒は、しばしば自分の心の中の刺激に気をそらされ、課題に集中できなくなる。まとまりのある活動ができず、授業に集中し続けることが困難である。何が重要なことなのかに気づくことができないので、重要でない刺激に注意を向けてしまう。また白日夢よりもはるかに強力に複雑な心の中の世界に引きこもりやすい。そして集団場面での学習が難しい。

○提案

・課題は細かく分け、教師はたびたびフィードバックをかけ、再方向付けをする必要がある。

・集中力に重度の問題がある子供には、時間を決めたワークセッションがよい。

・確かな見通しや構造化されたプログラムを必要とする。ルールに従えば正の強化を受けるということを子供たちに教える。

・集中力があまりなく、筆記速度がゆっくりで、活動にまとまりをつけることが非常に困難であるため、宿題や授業課題の量を減らしたり、別の部屋を利用する必要がある。

・席は最前列にし、授業に集中できるように頻繁に質問する。

・注意がそれたら、非言語的なシグナルを出す(例えば、肩を優しくたたく)。

・自分の内面の考えや空想から離れて、現実世界に注意を向けなおすよう教師は積極的に働きかけるべきである。

   5)協調運動が下手

 アスペルガー症候群の子供は身体的に不器用でぎこちない。堅くてぎこちない歩き方をするので、運動技能を必要とするゲームがうまくできない。微細運動が困難なために筆記に関する問題が生じたり、筆記速度がゆっくりだったり、描画能力に悪影響を及ぼしたりすることがある。

○提案

・粗大運動の問題が重度の場合は、適応運動教育プログラムを受けるよう紹介する。

・協調運動が下手なために、フラストレーション(欲求不満)がたまったり、チームメンバーにからかわれたりするので、無理に競技スポーツに参加させなくてもよい。

・高度に個別化された書字プログラムを必要とする場合がある。

・低学年の子供には、書く文字の大きさと均等性をコントロールするためのガイドラインを紙に書いておくことが有益である。

・制限時間のある課題を与える時、子供の筆記速度は遅いということを考慮すること。

   6)学業不振

 知能はだいたい平均から平均以上(特に言語領域では)だが、高度の思考力や理解力が足らない。理解や思考は非常に融通がきかない傾向がある。想像力は具体的なものに限られ、抽象的なものは苦手である。その学者風のしゃべり方と印象的な語彙力は、実は単に聴いたり、読んだりしたことをオウム返しに言っているだけなのに、それをちゃんと理解しているという誤った印象を与えてしまう。素晴らしい暗記力を示すが、それは機械的なもので、セットした順序で動くビデオのように子供は返答しているのである。したがって問題解決能力は乏しい。

○提案

・必ずやり遂げられるように構成された、高度に個別化された学習プログラムを提供すること。

・聞いたことをオウム返しするだけのことがあるので、それを理解しているとは思わないようにすること。

・授業内容が抽象的なときは、説明を補足し、簡単にすること。

・優れた記憶力を活用すること。

・感情の微妙なニュアンスは理解できないことが多い。

・文章を書かせると、繰り返しが多く、主題が次から次へ変わりやすく、言葉の意味を間違えたりする。

・優れた読解力を持っているが、言語理解力は低い。文章をすらすら読めるからと言って、よく理解しているとは考えないこと。

・興味のない科目には努力する意欲がわかない。

・時間制限のある課題は、ちゃんとやり遂げるだけでなく、丁寧にできなければならない。

   7)心が傷つきやすい

 教室内で求められることに対応するための感情的な力が足らないことがよくある。柔軟性に欠けるために、ストレスが溜まりやすい。自己評価が低く、自分を責めることがよくある。また間違いを犯すことに耐えられない。うつ状態に陥りやすいようである。怒りの反応やかんしゃくの爆発は、ストレスや欲求不満に対する反応としてよく見られる。なかなかリラックスできないようである。物事はかくあるべしと固く考えていることがそのようにならないと、たちまち頭に血が上ってしまう。

○提案

・ストレスに圧倒されそうになったとき、かんしゃくを爆発させないためにはどうしたらよいかを教える。

・教師の声に表れる感情は最小限に保つ。子供とのやりとりは、共感的で寛容な態度を明確に示しながら、冷静に、予測できるように、事実に即して行う。

・悲しいとか落ち込んでいるとかを本人が認識しているとは期待しないこと。他者と同様に自分自身の感情にも気づくことができない。

・教師は、重度の混乱、注意散漫、孤立化、ストレスに対する耐性の低下、慢性疲労、泣き叫び、希死念慮など、抑うつの徴候となる行動変化に注意することを怠ってはならない。

・特定の科目が難しくなったら、すぐに学業面の援助を受けなければならない。アスペルガー症候群の生徒は精神的につまづきやすく、失敗すると他の子供以上にひどい反応を示すからである。

 

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