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〜 「侵入生物」という用語について 〜
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■ [はじめに]
侵入種と言うのが一般的
「帰化種」という言葉は馴染みのある言葉だと思います。生物が人為的に自然分布を越えて別の場所に生息するようになった場合、その生物のことを従来は「帰化種」と呼んでいました。ですが、近年になって「帰化
naturalized」という言葉は「侵入 invasive」という言葉に言い換えられています。
世界的な組織であるIUCN(国際自然保護連合)も、現在は帰化種(naturalized
species)という言葉は用いず、侵入種(invaxive species)という言葉を用いています。現在は、「帰化」という用語を用いないのが世界的な流れになっています。ちなみに、IUCNというのは史上最初の世界的な自然保護NGOで、保護に関心を寄せる世界中の学者が結集した団体です。種の保存に対して中心的な役割をになっています。
こういった世界的な流れに合わせて、日本国内でも「帰化」という言葉を用いないのが一般的になっています。「今後は帰化種を用いる代わりに侵入種を用いるべきである」(村上
1998a)。「今後はなるべく「侵入種:invasive speacies」という用語に統一する方向が望ましいであろう」(小野
1998)。また、日本哺乳類学会も帰化種という言葉は用いていません。
「帰化」というと、一般に《国境を越える》という語感がありますが、国境というのは人間が決めたものにすぎませんので、生物の自然分布とは関係のない話なんですね。それで、「帰化」というのは適当な用語ではないということなんです。まぁ、日本の場合は自然分布域と国境がほとんど変わらないので、諸外国よりもこういった認識が薄いんでしょうね。
ちなみに、国内の、たとえば北海道にしかいない生物が、人間のせいで本州に生息するようになってしまったとしたら、これも「侵入」ということになります。また、人間のせいで国境を越えたとしても、それが自然分布の範囲内なら問題になりません。
「侵入種」というのはちょっと耳慣れない言葉かもしれませんが、こういった流れに合わせて「あむあむ」でも「帰化」とは言わずに「侵入」という言葉を使っています。なお、「あむあむ」では、特にお断りしない限りは、日本国内に外国産の生物が入ってくることを前提にして話を進めています。
■ 移入種とは?
実は、「侵入種」という言葉が耳慣れないワケがあります。「侵入」という言葉があまりピンとこない語感だということもありますが、実は「侵入」という言葉はあまり表に登場しないからなのです。学会やシンポジウム、そして新聞・雑誌でも、「侵入種」ではなく「移入種」について取り上げられていて、「移入種」という言葉のほうが多用されているのです。それでは、「移入」とはいったい何なのでしょうか?
「移入種」というのは、まだ「侵入」まで行っていない生物、つまり日本の自然地域に定着していない生物全般のことを言います。
日本に持ち込まれそうな生物か、または日本に持ち込まれようとしている生物を「潜在的移入種」と言います。つまり、外国にいたとしても「移入種」と呼ばれることがあるわけです。
ですが、一般的には、国内に持ち込まれたものを「移入種」と言います。単に日本国内に持ち込まれただけか、または日本の自然地域に入り込んだけどまだ野生化したとは言えないものも「移入種」と呼ばれます。
そのため、野生化してしまったものを「野生化移入種」と言って、単に国内に持ち込まれただけのものと区別することがあります。「野生化移入種」というのは、日本の自然地域に入り込んで野生化したけど、まだ定着するまでの段階には至っていないものを言います。
要するに、「侵入種」じゃない生物で日本の自然に入り込む可能性があるヤツは、ぜ〜んぶ「移入種」というわけです。なお、「移入」という言葉は日本でも従来から用いられていたようです。
■ 侵入種とは?
「侵入種」というのは、移入されて、日本の自然地域に野生化して、さらに日本の自然地域に《定着》した生物のことを言います。従来の「帰化種」というのは、この「侵入種」のことを指します。
「侵入種」というのは日本の自然地域に定着してしまって生息している外来の生物のことですが、外来の生物が侵入してしまった段階になってから対策をたてても、抜本的な解決法は何一つないというのが現状のようです。そのため、侵入種を現状以上に増やさないために、侵入種予備軍と言われる移入種についての対策が講じられています。そんなわけで、日本では「侵入種」という言葉はあまり表に出てこないわけですね。(まぁ、「侵入種」と言うと語感が悪いから「移入種」と言ってる、というのが一番の理由なんじゃないかと思うのですが…。だって、IUCNは「侵入種
invasive species」と言っていますからね。)
外国産のシベリアシマリスについては、すでに「侵入」している段階にあると思われますので、「あむあむ」では「侵入種」と言っています。
■ [補足] 外来種とは?
最後に、「外来種」という言い方をされることがありますので補足しておきます。「外来種」というのは、「移入種」と「侵入種」の両方を含んだ広い意味で使わることが多いようです。この場合「外来」というのは、《国境》の外からではなくて、《自然分布》の外から来た(来る)という意味です(念のため)。
■ [おわりに]
一人一人が外来生物を増やさない努力を
生物多様性(バイオディバーシティ、Biodiversity)についての問題が世界的に議論されています。ところで、生物多様性という言葉は耳慣れた言葉のような気もしますが、実はそれほど古くからある用語ではありません。1988年にE.O.ウィルソンとF.M.ピーターが用いたのが最初だそうです。そして、地球サミットで生物多用性条約が発行したのは、1992年の出来事でした。その後、1993年にわが国でも条約を批准、1995年に「生物多様性国家戦略」を策定して環境庁生物多様性センターを設置しています。
生物多様性という用語が登場するずっと昔から種の保存という問題に取り組んできたIUCNも、もちろん生物多様性の問題に深く取り組んでいます。外来生物の問題も、この生物多様性の枠の中で議論されていますが、IUCNは外来生物を生物多用性を脅かす大きな問題としてとらえ、内部にISSG(侵入種特別委員会
Invasive Species Specialist Group)という組織を設けて外来生物の問題に真剣に取り組んでいます。
環境を保護する動きが世界的に高まっています。日本はまだまだ遅れていると言わざるをえません。この地球の環境を守って後世に残していくためには、もはや甘えは許されないときが来てしまっているのです。シマリスが日本の自然を危なくしてしまっているのかもしれない…。そんなところから少し環境に目を向けて見られることをオススメします。
[参考文献]
- 「特集・外来生物と生物多様性の危機」
月刊誌 『生物の科学 遺伝』 第52巻第5号 裳華房
特に以下の論文を参考にしました。
- 小野正人「特集にあたって」
『遺伝』第52巻第5号 裳華房 1998 p.9-10
- 村上興正「移入種とは何か、その管理はいかにあるべきか?」
『遺伝』第52巻第5号 裳華房 1998a p.11-17
- 中村一恵「移入鳥類の問題
〜チメドリ類の野生化を中心に〜」
『遺伝』第52巻第5号 裳華房 1998 p.33-36
- 池田透「移入哺乳類の現状と対策」
『遺伝』第52巻第5号 裳華房 1998 p.37-41
- 村上興正「移入種対策について
―国際自然保護連合ガイドライン案を中心に―」
『日本生態学会誌』第48巻第1号 日本哺乳類学会 1998b p.87-95
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