外国生まれのシマリスは…

〜 日本に侵入したシマリスたち 〜

■ シマリスは侵入種

日本に棲むシマリスはエゾシマリスといって、北海道にしか生息していません。本州・四国・九州でシマリスを見かけたとしたら、それは外国産のシベリアシマリスです(エゾシマリスでないとは言えませんが…)。外国産のシベリアシマリスは侵入種の一つに数えられています。

主な帰化動物の原産地・渡来年一覧(林公義、1987を一部改変・加筆)

種名(和名)

原産地

移入(発見)年

移入(発見地)

目的・経路

ハクビシン

中国〜東南アジア

(1943)

(静岡・山梨県)

毛皮・愛玩用?

マスクラット

北アメリカ

1945頃

(東京都江戸川)

毛皮用

ヌートリア

南アメリカ南部

1939

兵庫県神戸市

毛皮用

タイワンリス

台湾南部

1935

東京都伊豆大島

動物園飼育用

チョウセンシマリス

朝鮮半島

本州・四国・九州

愛玩用

マングース

スリランカ

1910

沖縄本島

ハブの天敵として

チョウセンイタチ

朝鮮半島

1930頃

九州・中国地方

毛皮用

出典: 中村一恵編『特別展 日本の帰化動物』 神奈川県立博物館 1988 p.86
上記図表は哺乳類の部分のみを抜粋したもの

日本の主な帰化脊椎動物(中村一恵)

種類(和名)

原産地

移入(発見)年

移入(発見)地

目的・経路

ナミハリネズミ

ヨーロッパ?

(1987)

(神奈川県小田原市)

愛玩用・逸出

ジャコウネズミ

南アジア

(1656)

(長崎県)

オランダ船で密航か

タイワンザル

台湾

1935頃

伊豆大島

飼育用・逸出

アライグマ

北米

(1970's)

(岐阜県可児市)

飼育用・逸出

チョウセンイタチ

朝鮮

(昭和初期)

(近畿地方)

養殖用(毛皮)・逸出

アメリカミンク

北米

1930

北海道

養殖用(毛皮)・逸出

ハクビシン

南アジア

(1936〜1937)

(香川県塩江町)

養殖用(毛皮)・逸出

インドマングース

インド・スリランカ

1910

沖縄本島・渡名喜島

ハブ駆除用・移殖

タイワンジカ

台湾

1955

和歌山県友ケ島

飼育用?・移殖

マリアナジカ

フィリピン

1853

小笠原父島

?・移殖

タイワンリス

台湾

(1935頃)

伊豆大島

飼育用・逸出

チョウセンシマリス

朝鮮

(1970頃)

(東京都内)

愛玩用・逸出

マスクラット

北米

(1947)

(東京都江戸川)

養殖用(毛皮)・逸出

ヌートリア

南米

1939〜1940

兵庫県神戸市など

養殖用(毛皮)・逸出

出典: 中村一恵『スズメもモンシロチョウも外国からやって来た』 PHP研究所 1990 p.242
上記図表は哺乳類の部分のみを抜粋したもの


上記の図表を見ればわかるように、チョウセンシマリスを始めとする外国産のシベリアシマリスの日本への侵入は、ペットとして飼われていたものが逃げ出したか、あるいは捨てられたりして生じているものです。また、ペットが野生化した数少ない哺乳動物でもあります。しかも、林先生による図表からわかることは、気づいたら日本中で野生化していた、という事実です。


■ チョウセンシマリスは日本の野生鳥獣?

『日本産野生生物目録 〜本邦産野生生物の種の現状〜 (脊椎動物編)』(自然環境研究センター刊)という書籍を、環境庁自然保護局野生生物課が編集して1993年に刊行しています。この書籍では、外来種や飼育種であっても、現在野生状態で安定的に生息し繁殖している種については、日本産の野生動物とみなしています。つまり、行政の扱いとしては、侵入種であっても《日本産》の野生動物と呼ばれることになります。

この書籍によると、日本産のリス科の動物は以下の10種(または亜種)になります。下の表は、この環境庁のリストをベースに、加工して作成したものです。加工した部分がかなりありますのでご了承ください。

亜目 亜科 亜種
げっ歯目
RODENTIA
リス亜目
Sciuromorpha
リス科
Sciuridae
リス亜科
Sciuromorpha
ハイガシラリス属
Callosciurus
クリハラリス
C. erythraeus
タイワンリス
C.e. thaiwanensis

リス属
Sciurus

キタリス
S. vulgaris

エゾリス
S.v. orientis

ニホンリス
S. lis

 

シマリス属
Tamias

シマリス
T. sibiricus

エゾシマリス
T.s. lineatus

チョウセンシマリス
T.s. barberi

モモンガ亜科
Pteromyinae

モモンガ属
Pteromys

ニホンモモンガ
P. momonga

 

タイリクモモンガ
P. volans

エゾモモンガ
P.v. orii

ムササビ属
Petaurista

ムササビ
P. leucogenys

キュウシュウムササビ
P.l. leucogenys

ワカヤマムササビ
P.l. oreas

ニッコウムササビ
P.l. nikkonis

和名は、以下のように言いかえられることもあります。
 「ハイガシラリス属」(Callosciurus)→「タイワンリス属」 or 「クリハラリス属」
 「クリハラリス」(Callosciurus erythraeus)→「タイワンリス」
 「ニホンリス」(Sciurus lis)→「ホンドリス」
 「シマリス(Tamias sibiricus)」→「シベリアシマリス」 or 「アジアシマリス」
 「ニホンモモンガ」(Pteromys momonga)→「ホンドモモンガ」
 「ムササビ」(Petaurista leucogenys)→「ホオジロムササビ」

この表を見るとわかるように、日本産の「シマリス」と言った場合はチョウセンシマリスも含むことになるようです。なお、この「チョウセンシマリス」というのは、輸入された外国産のシベリアシマリスを総称として用いられていて、厳格に亜種チョウセンシマリスを示すものではないと考えられます。要するに、行政上は、日本には北海道以外の地域にもシマリスが野生として《分布》しているという扱いがされているわけです。


■ 侵入種とは?

ところで、侵入という言葉を説明もなしに使ってきましたが、侵入種とは何なのでしょうか?ここで一応確認しておきます。

侵入種というのは、人間が媒介することによって自然状態ならいないはずの場所にいないはずの生物が移動し、移入したその場所で繁殖し定着するようになった生物のことをいいます。鳥や風、海流など、自然の手によって移動した生物は侵入種とは言いません。船やトラックの積荷に入り込んで移入して定着した生物は侵入種と呼ばれることになります。

なお、「侵入種」といのは、従来は最初「帰化種」といわれていました。最近は「帰化種」という言葉は使われていません。その理由については[こちらのページ]に記載しています。
 → 「侵入種」という用語について


【注】 なお、参考資料に「神奈川県立博物館」発行のパンフレットを使用していますが、同博物館の自然部門は1995年に分離、小田原市入生田に移転し、現在「神奈川県立生命の星・地球博物館」と名称を変えています。

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